■ こんな場所で
あまり外でデートをしない二人だが、珍しく映画館に来ていた。
映画に夢中になりながらも、隣の室井の存在を嬉しく感じる。
ぶつかっている肩から感じる温もりに、何となく表情が緩む。
横目で室井の様子を盗み見ると、当たり前だが映画に夢中のご様子。
それがほんの少しだけ寂しい。
……だなんてことは、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
青島は馬鹿なことを考えている自分に苦笑しながら、視線をスクリーンに戻した。
青島が再び映画に夢中になった頃。
ひじ掛けの上に置いてあった青島の手の甲を、不意に室井が指先で突いてくる。
―ん?
室井の方を振り返ると、思ったよりもずっと近くに室井の顔があって驚いた。
更に近付いてくるから、目を丸くする。
「…っ」
唇を重ねられて、目を見開いたまま息を止めた。
客の入りも少ないし一番後ろの席だったから誰に見られることもないが、人のいる場所でのキスに青島は思わず赤面してしまう。
暗いからそんなことが室井に分かるはずもない。
だが軽く触れ合わせただけで離れた室井が、微笑しながらその頬を撫ぜたから、バレバレだったのかも知れない。
そのままもう一度唇を重ねてくる。
今度は予想が付いたので瞳を閉じた。
室井がこんな大胆な行動に出ることは珍しいが、不愉快ではなかった。
むしろちょっと嬉しい。
柔らかいキスを繰り返しながら、室井の手をそっと握った。
その手を握り返して唇を離すと、吐息のような小さな声で室井が呟く。
「すまない」
「……?」
何に対する謝罪か、青島には良く分からなかった。
キスをしたことに対してだろうか。
話を聞きたいが、今は映画の真っ最中。
会話をするのはマナー違反である。
少し考えて、室井の唇に軽く触れると微笑んで首を振る。
青島が不愉快に思っていないのだから、何に対する謝罪でもその必要は無かった。
それが伝わったのか室井も微笑み返してくれるから、青島はまたスクリーンに目を向ける。
映画が終わるまで、手を繋いだままだった。
室井がキスをした理由は、映画に夢中な青島の気を引きたかったから。
その話を後から聞いて、青島は笑った。
「やっぱり謝る必要ないですよ、室井さん」
二人揃って映画に嫉妬していたのだから。
END
2005.3.15
あとがき
え〜〜〜どうもすみません(^^;
言い訳すら浮かばないらしいです。
映画に嫉妬するくらいなら、一緒に見に行かなきゃいいのに。
ねぇ?(誰に聞いてるんだか)
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