■ 奪う


文句を言おうと開きかけた唇を、室井に強引に奪われる。
青島は顔を顰めて噛み付いてやろうかと思ったが、さすがに恋人の唇を噛むのは躊躇われた。
躊躇しているうちに、室井が青島の唇を好きなように貧って離れていく。
青島は薄っすらと頬を染めて、室井を睨んだ。
「キスで誤魔化さないでください」
二人は口喧嘩の真っ最中だったのだ。
室井は眉間にシワを寄せてムッツリと答える。
「誤魔化してない」
「嘘つき。口下手だからってキスで誤魔化そうとすんの、止めてくださいよ!」
「誤魔化してない。現に君は誤魔化されてないだろう」
しれっと言われて、青島の眉がつりあがる。
「屁理屈…っ」
喚こうとした唇をまたも塞がれる。
「んーーーー!」
今度は唇を重ねたまま抗議の声を上げてみるが、効果は無かった。
室井の背中を叩こうとした両手は室井に取られてしまったし、背中は壁に押し付けられてて逃げ場はない。
「ん〜〜〜……」
舌で激しく乱されて強く吸われると、さすがに青島の身体から力が抜けていく。
長いキスが終わる頃には、青島の手は室井のシャツの裾を掴んでいた。
「…誤魔化されて、くれたか?」
青島の唇を舐めて尋ねてくるから、青島は赤い顔で膨れっ面のまま、室井の首に両腕を回した。
「最悪だ」
抱き着きながらもブツブツ文句を言う青島に苦笑しながら、室井も背中を抱き返してくれる。
「そうか」
「ムカツク」
「すまない」
「……」
そこで謝るのは反則だと思う。
怒っている自分が馬鹿みたいに思えてくるのだ。
青島は溜息をついた。
「さっきの件については、保留ですからね。後で仕切り直しますよ」
そう言って今度は青島からキスをした。









END

2004.12.28

あとがき


キスで誤魔化されるようなことですから、
やっぱりケンカの原因は凄くくだらないことです。
この後身体で仲直り(…)をした二人は、
ケンカのことなど綺麗さっぱり忘れていることでしょう。
特に青島君は(笑)



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