■ おでこに
室井が喫煙所に立ち寄ると、青島がソファーの上で眠っていた。
傍によっても起きる気配は全く無い。
気持ち良さそうに無防備な寝顔を晒しているから、室井は苦笑した。
特に青島に用事があるわけではない。
だが、何となく眠りこける青島の横に腰を下ろす。
手を伸ばして前髪を梳くが、やっぱり反応がない。
剥き出しになった額が愛らしい。
室井は微苦笑して、すぐに手を引いた。
こんなことをしていて、青島が目を覚ましたら大変だ。
青島は室井の気持ちを知らない。
室井自身、青島への気持ちに気付いたのはつい最近のことだった。
丸三日悩んで、絶対に打ち明けないと決めたのは更に最近のこと。
失うくらいなら、今のまま、同士として共に在りたいと思ったのだ。
自分の中で折り合いをつけてしまえば、今の状況は悪くない。
それどころか、恵まれているといえる。
青島からは絶大な信頼と、それから確かな好意を貰っている。
それが室井の青島への好意とは種類が違っても、室井ははっきりと幸せだと思えた。
いい夢でも見ているのか、ふいに青島の寝顔が緩んだ。
ふにゃあっとした笑顔に、室井は吹き出しそうになる。
―可愛いな…。
そんなふうに思うくらいは自由だろうと、室井は思う。
引いてしまった手を戻して、もう一度青島の前髪を梳く。
額を出すと、更に童顔に見える。
開かない、自分を見ない瞳が、少しだけ惜しい。
尤も青島の目が開いていたら、こんなことをしていられないのだが。
「……」
室井は辺りに人がいないことを確かめると、素早く身をかがめた。
本の一瞬だけ。
その額に、唇で触れる。
―俺は何をしてるんだろうな。
触れながら、室井は心の中で自分を嘲った。
すぐに身体を離すと、じっと青島を見つめ、眠っているかどうかを確かめる。
何の反応もないことから眠っていると判断すると、ホッとして腰を上げる。
立ち上がると青島を見つめて、一言だけ呟いた。
「すまない」
室井が振り返ることもなく喫煙所を出て行くと、程なくして勢い良く青島が飛び起きた。
「……え?」
真っ赤な顔で額を押さえる。
「え?何?何で?え?室井さん?」
混乱した青島は、起こしに来たすみれに声を掛けられるまで、そのままの体勢で動けなかった。
青島が室井の気持ちを知るのはもう少し先の話。
END
2004.12.8
あとがき
室井さん片思いです。片思いの両思いかもしれませんが。
でこちゅーは可愛らしくて良いですよね。
ラブラブな二人のでこちゅーでも良かったかな〜。
プロローグっぽいですが、どこにも続きません(笑)
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