■ 指、もしくは手に
帰宅した青島は、玄関前に室井の姿を認めて驚いた。
「室井さんっ」
駆け寄った青島を見て、室井が小さく微笑んでくれる。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。どうしたんですか?」
「いや、いきなり来てすまない」
「それは全然いいんですけど。合鍵使って中に入ってれば良かったのに」
室井は決まり悪そうに、視線を落とす。
「…それが家に忘れてきたらしいんだ」
だからこの寒い中玄関先で、青島が帰宅するのを待っていたらしい。
「電話くれれば良かったのに」
青島は室井の手をとって、握った。
予想通りにかなり冷えている。
「こんな冷たくなって」
思わず眉を寄せると、室井は苦笑した。
「もう少し待って帰って来なかったら、帰ろうと思ってたんだ」
突然会いに来たせいか、気を使ってくれたらしい。
青島はわざとらしく膨れっ面を浮かべた。
「そんな勿体ないことしないでくださいよ」
「勿体ないって…」
小さく声を漏らして笑う室井につられて、青島も笑みを零す。
そして、握ったままだった手を持ち上げて、唇を押し付けた。
「!」
室井が息を飲んだ音がして、青島は唇を押し付けたまま笑った。
「青島」
咎めるように名前を呼ばれるが、青島は気にしない。
照れ臭いせいだと分かっているから。
「少しは温まりました?」
「…ああ」
「室井さん、顔赤いよ?」
覗き込むように室井の顔を見ると、さすがに睨まれる。
「からかってるだろう」
「いいえ。ただ、可愛いな〜と思っただけですよ」
と言ったら、室井が目を剥いた。
表情が強張ったから、怒らせたかもしれない。
だけど、本当にそう思ったのだから、仕方がないじゃないか。
青島が悪びれずにそんなことを思っていると、強張ったままの室井に促される。
「それで、家に入れてくれないのか?」
「あ、いや、まさかまさか」
青島は慌てて鞄の中から鍵を出すと、すぐにドアを開ける。
ドアを押さえて室井に先を譲るが。
「ど」
うぞ、とは言えなかった。
言い終わる前に室井に腕を掴まれ、強引に家に入れられる。
「!?」
室井は玄関のドアを閉めると、ぎょっとしている青島の身体をその玄関に押し付けた。
「むろっ」
顎をとられて、いきなり唇を奪われる。
不意打ちにしては随分濃厚な口付けに呆然としていた青島も、すぐにそれに応じた。
どれくらいそうしていたのか、青島が呼吸を乱すと、漸く室井が解放してくれる。
「……室井さん?」
荒い呼吸を整えるように深呼吸をしながら室井を見る。
「人のことをからかうからだ」
拗ねたように言われて、青島は吹き出しそうになるのを堪えた。
ムキになっていただけなのだろう。
―そういうところが、可愛いって言ってんだけどね。
そう思ったが口には出さなかった。
さすがにこれ以上言ったら、仕返しに何をされるか分かったものじゃない。
可愛いと言う代わりに室井の首に両腕を回して、今度は青島からキスを贈った。
END
2004.12.1
あとがき
室青です。逆でも全然構わないような話ですが…(^^;
どちらにせよ、ただのバカップルです(笑)
青島君、室井さんの手にちゅーしてるところを、
近所の人に見られたらどうする気だったんでしょうか…
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