■ 背中に


青島は身体を揺すられて目を覚ました。
そっと目を開けると、室井が見下ろしている。
「おはよう」
「…はようございます」
欠伸交じりになんとか挨拶すると、室井の手が伸びてくる。
優しく髪を梳かれてそれがあまりに気持ち良いから、また瞼が落ちそうになる。
「こら、寝るな」
「…起きてますよ」
「嘘吐け。先にシャワー浴びるか?」
「どうぞお先に…」
分かりきった返事だったのか、室井は苦笑した。
「じゃあ、先に浴びてくる」
布団から出ると、ベッドの縁に腰を下ろして、脱ぎっぱなしだったパジャマに片腕を通す。
青島に向けられていた背中に、落ちかけていた瞼がまた開いた。
均整の取れた真っ直ぐな背中。
そこに残る青島の爪痕。
気恥ずかしさに視線を逸らすが、どうしてもそこに目がいってしまう。
大好きな室井の背中に自分が残した夕べの後。
何となく手を伸ばして室井がパジャマを着てしまう前に、その背中に触れる。
室井の背中がビクリと反応して、首だけで振り返る。
「あ、青島?」
驚いたようで目を丸くしている。
「…痛い?」
指でそっとなぞると何のことを指しているか分かったようで、室井は微笑を浮かべた。
「いや、大したことは無い」
そう言ってはくれるが、きっとシャワーを浴びれば沁みるだろうし、背もたれに寄りかかれば痛むだろう。
未だにぼんやりとする頭で優しい恋人に感謝しながら、青島は微笑んだ。
指でなぞってから唇を寄せる。
そっと触れると、室井が息を飲んだ音が聞こえた。
痛かったのかだろうかと思って視線だけ向けると、目を剥いた室井と視線がぶつかった。
驚いているようだが痛かったわけではなさそうだ。
いくらか強張った室井の表情に悪戯心が湧く。
舌を出すと爪痕をなぞった。
「…っ、青島」
「はい?」
「誘ってるのか?」
「いや、全然」
きっぱり言うと室井の眉間に皺がよる。
青島は室井の背から身体を離すと、声を出して笑った。
「遅刻しますよ」
時計と青島を見比べていた室井が、着かけていたパジャマを放り出した。
青島は調子に乗ったことを少し後悔したが、たまにはこんな朝もいいかと思う。
圧し掛かってきた室井の首に、素直に両腕を回した。
「お手柔らかにお願いしますね。仕事にならなくなる」
「努力はするが…君次第だろうな」
「と、いうと?」
「不用意に煽るな、ということだ」
煽ってるつもりはないのだけど…と思ったが、室井の熱い唇に塞がれて、声にはならなかった。










END

2004.11.27

あとがき


朝っぱらから元気な二人。朝だから余計か?(下品)
背中のキスは色っぽい状況以外では全く浮かばないです〜。
お風呂場とかでも、ちょっと良かったかもしれません。
どっちからどっちへのキスでも、萌えたかも。
でも何話書いても似たような話になる自信がありますね(笑)
最後は二人ともその気になって終わります、きっと。



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