「くそ、なんなんだこのファイリングの仕方は・・・何年刑事やってんだ、あいつら」

―クビにしてやろうか、全員。

行儀悪くホテルのベッドの上に胡座をかいた一倉が腹立ちまぎれに、半ば本気で呟いた言葉に、ちょうど

バスルームから出てきたばかりの青島は一瞬びっくりして、お風呂いいですよ〜、の言葉をごくんと飲み

込んでしまった。

窺う。

一倉は不機嫌そのもの、青島にも全く気がつかないで(物音だってたててるのに)、いらいらと、資料を乱

暴にめくっている。

「・・・・・・ん?またかよ、大体・・・・・・」

ぶつぶつ文句をいいながら。

(一倉さん、ひとりごとこんなに多かったっけ・・・・・・)

青島は呆れて暫く見ていたが、ふっと、いやなことを考えてしまった。独りごとばっかりいってると、将来ヘン

クツなおじいさんになっちゃうって聞いたことがある・・・それに一心不乱に、こんなところにまで仕事を持ち込

んで、ちっとも気がつかない、なんて。

二重に不愉快になった青島は意を決してスリッパを履き、そうっと足音を殺して、刑事の得意技、忍び足で

抜き足差し足・・・。

「わ!」

「!」

ふざけて、背後に寄って、その背中に軽く力を入れたつもりだったのだが、一倉は驚いたはずみに、見事に

前につんのめって、思い切り!自分の膝に額をぶつけてしまった。

青島も、これには驚き、慌てた。

心配しながら、一歩、後ずさる。

「あ、すみません!ちょっと、ちょっと驚かせようかな、なんて・・・・・・ハハハ」

「・・・・・・俺に何か恨みでもあるのか?」

振り返った一倉の顔・・・。

いやな汗が流れた。

(ヤバイ・・・)

「あるわけないじゃないですか、いやだな〜・・・・・・あ、怒らないでくださいね、お遊びなんですから、ね」

「うるさい」

青島は本能的な恐怖に後ずさりし、ダッシュして逃げようとこころみたが、一倉はその図体に関わらず、実

に俊敏に青島の腕をつかみ、抜けそうなくらい力任せに引っ張ってそのまま、ベッドに押し倒した。

「!」

柔らかいベッドにゆるい衝撃を受け、青島が投げ出される。その上に、一倉の大きな体がのしかかった。

身動きがとれない。

放り投げた資料が、ばらばらと、あたりに散った。

吐息が素肌にかかって、ヒっと青島はあわれな声を上げた。

「ちょ、ちょっと・・・まだ・・・」

「まだ、何だ。待ちきれなかったんだろ?」

「そ、そんなこといってません、すみません〜」

「――別のことで、これからお願いさせてやる」

腰にタオルを巻いただけの下肢に、傍若無人な手が伸びた。

それは見る間に、青島の理性を奪ってゆく・・・。

「何それ、・・・・・・ちょ」

「もっと色っぽい声出せよ、ほら」

「・・・・・・ンッ、あ、やめ・・・・・・」





ピピピピピピ・・・

「・・・・・・」

「・・・・・・」

二人とも思わず動きが止まる。

お構い無しに鳴り響くのは、携帯の着信音。

―こんなに無粋な音は他にない。

半ばその気になりかけていた青島は思った。

青島を見下ろしている一倉が、渋面になる。

鳴っているのは、一倉の携帯である。

「・・・・・・シカトしよう」

「ちょ、まずいでしょ。かなりしつこくなってますよ」

未だに鳴り止まない携帯が、「早く出ろー!」と急き立てているようだった。

一倉は尚も渋い顔をしている。

「気にするな、そのうち止む」

「無理、気になりますよ」

「すぐに気にならなくしてやる」

一倉の手が青島の身体を撫ぜたから、背を少しだけ反らせる。

その後に続く快感を思えば、青島だって電話なんぞに邪魔されたくはない。

だが、そうもいかない。

二人とも刑事で、しかも一倉は立場ある男だ。

青島は一倉の手を掴むと、愛撫を中断させた。

「ダメ、俺が気になる」

「だから・・・」

「絶対集中できません。そんなの楽しくない」

一倉と抱き合うなら、ちゃんと心から楽しみたい。

言外に伝えると、一倉は青島を見つめたまま逡巡していたが、小さく舌打ちをして青島の唇を掠め取ると

身体を離した。

乱暴にベッドから降りると携帯を手に取った。

「一倉だ」

やはり部下からだったのだろう。

険しい表情で話を聞いている。

青島は身体を起こすと、黙って一倉を盗み見た。

「それは既に指示してあるだろう・・・・・・バカ違う・・・」

真剣な声音は仕事のソレで、久しぶりに見る『仕事中』の一倉だった。

―なんだよ・・・やっぱりカッコイイじゃん。

部下に指示を出す一倉を見ながら、青島は一人笑った。

なんだかんだと言いながら、一倉も刑事なのだ。

事件が絡めば放っておけない。

「・・・ああ、それでいい・・・・・・そっちでやれるか?・・・分かった、俺も明日は早く行くから」

どうやら早朝からご出勤らしい。

それは少し寂しいが、今夜は一緒にいられるということだ。

素直に喜んでおこうと、青島は思う。

電話を切った一倉が青島を見たから、青島は両腕を広げて見せた。

一倉は目を丸くする。

「なんだ」

「ん、惚れ直しました」

「は?」

「その気になったから、早くやりましょうって言ってるんです」

今度こそ、一倉は目を剥いた。

青島はその顔を見ながら大きく笑って、広げた両手を一倉に向けて伸ばした。

こうなればいつまでも驚いている一倉ではない。

苦笑を浮かべると、青島に近づいてくる。

触れられる距離にくるのを待って、青島は両手で一倉を抱きしめた。

そのまま後に押し倒される。

「邪魔されたと思ったんだがな・・・・・・結果オーライか?」

軽く唇を合わせながら、欲望に忠実な恋人に青島はひっそりと笑った。
























END
(2005.6.21)

この色が貴ノ様、
この色が私でした。

どうですか!前半部の素晴らしいことっ!
悪戯をしかけて自爆した青島君は可愛く、やっぱり一倉さんはエロオヤジ(笑)
折角エロ突入!とばかりにいい雰囲気で、貴ノ様がお話を書いてくださったのに、
続きを私が書いたばっかりに、萎え〜な展開で申し訳ありませんっ(土下座)
エロ・・・どうして書けないんだろう〜(涙)

貴ノ様とのメールのやり取りの間に、私が「TOP絵の一倉さんに萌えるー!」と訴えたら
小話を書いてくださいまして、調子に乗った私が続きを書かせて頂いた次第です。
図々しく言ってみるものです(笑)
貴ノ様、この度はありがとうございました!

このお話が生まれる切欠になったイラストは貴ノ様のサイトで拝見できます。
貴ノ様のサイトへはこちらから〜v