■ 都市伝説?


関東に上陸した台風9号によって東京の交通網は寸断された。
それはここ、お台場においても同様で、レインボーブリッジも湾岸線も
暴風雨のため通行止めとなってしまった。

『レインボーブリッジ封鎖できません!』

なんて事は、自然の猛威の前には意味を成さない。
あれだけ苦労させられたのにねぇ・・・
交通網を遮断されたお台場は陸の孤島となってしまった。
夏休みも終わった平日とはいえ人気スポット。
それなりの人出はあり、帰宅できなくなった人達の避難先に
湾岸署の道場があてられた。
台風避難民となったのは観光客だけでなく湾岸署員も同様だが
そこは悲しき公僕、自分達のことは後回し・・・

「管内見回り、終わりましたぁ〜」
交通課だけでは手が足りず借り出された青島が全身ずぶ濡れで
帰ってくると署内にはカレーの匂いが充満していた。
「お腹へったぁ〜」
考えてみれば夕食も取らずに走り回っていたのだ。
すきっ腹にカレーの匂いは応える。
カッパを脱ぎながら刑事課に入るとすかさず雪乃がスポーツタオルを
手渡してくれる。
相変わらず青島限定で優しい雪乃だ。
「あ!すみれさん、なに食べてんの!」
「カレー」
「なんですみれさんだけ食べてんの」
「炊き出しのカレーが余ってたから貰ったの」
避難民用の炊き出しが刑事課にも配られたのかと思ったが
すみれの一言によって否定された。
余ったからなんてウソだ!
と刑事課全員の心の叫びが聞こえた気がする。
余ったからと捧げられた貢物に決まっている。
湾岸署の食物連鎖の頂点にたっているのは間違いなく恩田すみれだ。

カレーは諦めて保存食のカップめんを食べようと引き出しを開けると・・・
「!ない!!」
ガタガタと他の引き出しを開けてみるが何処にもみあたらない。
「あ、青島くん。保存食は供出されたから」
「供出?て何処に?」
「避難民のみなさんに」
「え!だって炊き出しがあるじゃない!」
「1週間前に特捜が解散したばかり。買出しに行ってなかった」
「あ〜」
なんて間の悪い。いつもなら初動捜査期間賄えるくらいの備蓄はあるのに。
ガックリと肩を落とし非常食を買いに行こうと刑事課を出ようとした青島に
すみれのとどめの一言が・・・
「自販機も完売」
「それも避難民が食べちゃったの?!」
「ううん、私たちの夕食になった。青島くん帰ってくるの遅すぎ」
「取っといてよ!!仲間でしょ!!」
「甘い!非常時には弱肉強食よ」
「世間の風って冷たい・・・」
頑張って働いてきたのに、ご飯も食べられないなんて酷すぎる。
やさぐれて机になつく青島に雪乃がカップスープを差し出す。
「雪乃さん、優し〜い♪」
「何か残ってないか聞いてきますから・・・室井さん?」
「え!室井さん」
ピョコンと体を起こす青島、まさにパブロフの犬状態。

刑事課の入り口に立っているのは紛れもなく室井。
だが、しかし!
現在の湾岸署は陸の孤島と化しているはず。
この強風ではヘリも飛ぶことは出来ない。
でも、いつものごとくビシッときめた三つ揃いのスーツにオールバック姿。
しかも両手には風呂敷包みを提げている。
その風呂敷包みに反応したのはもちろん恩田すみれ。
「室井さん、ソレ何?」
本庁のキャリアに対する態度でも質問の仕方でもないが
だれもそんなこと気にしちゃいない。
当然、室井も気にしていない。
ここに袴田課長や署長、副署長がいれば大騒ぎになっただろうが・・・
台風中継にやって来たTV取材に自分たちをアピールする為、道場に行っている。
「差し入れだ」
その言葉にすみれの瞳がキラリと光る。
重そうな風呂敷包みを受け取ると室井の許可も取らず包みを開ける。
流石に青島が注意をしたが聞いちゃいない。
「うわぁ〜♪美味しそ〜」
包みの中から現れたのは五段重ねの重箱。
ワラワラと集まってきたみんなの視線は重箱の中身に釘付けになった。
「一と二の重が塩むすび、三の重がシャケ、四の重がマヨツナ、五の重が牛の佃煮だ」
室井が重箱にギッシリと詰め込まれたむすびの具を説明する。
もうひとつの重箱は厚焼き玉子や比内地鶏の煮物などのおかずがギッシリ。
そのどれもが青島の好物である。
「流石ね室井さん。ラインナップが青島くんの好物ばかり」
愛されちゃってるわねぇ〜とすみれ。
何故、青島の好物を知っているなんてヤボな事を聞いてはいけない。
食に関して恩田すみれ情報にスキはない。
ましてやアイドル青島情報はどんな内容でも『金のたまご』となる。
「室井さん・・・こんなに沢山。重かったでしょうにすいません」
「いや、頑張っている君たちにこの程度の事しかしてやれなくてすまない」
「なに言ってんですか!室井さん以外こんな事してくれるキャリアなんていませんよ」
確かに、いまい。
台風の暴風雨をものともせず重箱を抱えて所轄にやって来るキャリアなど・・・

「はい、青島くんの分」
アッという間に刑事課全員に取り分けられた差し入れが青島に渡される。
誰をメインに差し入れられたか分かっているので青島の取り皿には多目に盛られている。
「ありがと〜って、すみれさん室井さんの分は?」
「そこにあるじゃない」
そう言われて自分の周りを見るが自分に渡された取り皿だけしかない。
「ないじゃん」
「青島君が持ってるじゃない。それ二人分」
「ちょ!すみれさん何考えてんの」
「しょうがないじゃない。取り皿に余分がないんだから」
「だからってねぇ!室井さんに失礼でしょ」
「そう?室井さん、青島くんと一緒じゃイヤ?」
「だからぁ〜」
そういう問題じゃないと青島がすみれを説得?しようとしたが室井に遮られる。
「青島、私は必要ないからお前が食べるといい」
「え、だって室井さんが持ってきたのに・・・」
「私は食べて来たから大丈夫だ。お前が喜んで食べてくれれば私は嬉しい」
「室井さん・・・」
室井さんって優しいし、人間が出来てるなぁ〜
と尊敬の眼差しで見つめている青島に教えてやりたい。
室井が青島の前では頼りがいのある大人の男であろうとしている事を・・・
奇跡のように手に入れることが出来た青島に嫌われたくないという男心
理解できるから健気だとは思うが、目の前でイチャイチャされると面白くない。
女心って複雑なのよねと中華風つくねを頬張りながら考えるすみれにとって
食欲の方が女心より勝っているようだ。
「う〜ん美味しい♪いいなぁ〜青島くん、羨ましい」
「何が?」
「だってぇ、いつもこんな美味しい料理食べてるんでしょ」
持つべき者は料理上手な恋人よね♪
なんてサラッと言うすみれに青島が慌てて周囲を見回す。
「す・すみれさん」
小声ですみれの発言を注意する青島にため息ひとつ。
「今更、みんな知ってるじゃない。青島くんの恋人が誰かなんて」
本当に今更だ。
「そりゃぁ・・・そうかもしんないけど・・・」
ほほを染めて室井を横目で見る青島は相変わらず年齢不詳だ。
普通なら40前の男がほほを染めた姿なんて不気味でしかないのに
青島ならば『可憐』と表現されても可笑しくないのだから。

さすが!アイドル青島である!!

そんな青島の姿を愛おしさ200%の眼差しで見つめる室井。
砂吐きものの甘ったるさも、ここ湾岸署においては日常茶飯事。
『近くまで来た』のキメ台詞と共に最低でも週一で来ている室井だ。
青島のために警察トップを目指す警視庁一忙しいはずのキャリアが
どうやって暇を見つけるのか『警視庁七不思議』のひとつと謂われている。

差し入れは美味しいし、とっても嬉しいけれど・・・
しつこい様だが交通機関がすべて遮断されているこのお台場に
どんな方法で来たのか?
「都市伝説にあったよな、地下の第二の東京って」
「あ!知ってる。東京の地下に網の目のように広がってるって」
「有事の際の巨大シェルター」
「でも、あくまでも噂だろ?」
「う〜ん、でもなぁ」
全員の意識はただ一人のキャリアに集中する。
あのキャリアの行動を知れば知るほど単なる噂とは思われないのだ。
でなければ説明がつかない・・・様な気がする。
「青島のためなら利用できる物は何でも利用しそうだし」
「それが・・・」
国家機密であっても、とは口が裂けても言えないが
室井なら納得できると全員が思った。

室井慎二、青島俊作のためなら国家機密さえ私物化する男!










END

しーの洸様



青島バカにはたまらない一品をしーの様に頂きました!

さすがエリート官僚です。
自然の力にも負けません。
青島君がそこにいる限り!室井慎次はどこまでも!(?)

本当にどうやって室井さんがやってきたのかは気になるところですが、
青島君への愛でvと思うと、納得できちゃうから不思議(不思議なのはお前だ)

しーの様、有り難う御座いました(^^)



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