■ 帰りたくない


帰りたくないなぁ。。。
理由もなく後ろ髪を引かれる心を自覚しながら、玄関に座り込んで靴を履いた。
俺を持て成してくれたこの部屋の主は、見送りのために後ろに控えている。
まったくキャリアらしくない。
実現しないだろうと思っていた約束の方を先に叶えてくれた相手はきっと、もうひとつの約束を実現するまで会うつもりはないんだろう。
それが何となく淋しかった。
「よっ・・と」
ふっきるように声に出して立ち上がる。
振り返ってさよならを告げれば出ていくしかない。
帰りたくない。
こんな気持ちはココを出れば無くなる。
たった1回家に呼ばれたくらいで何を未練がることがある。
うしっ。
早く帰ろう。その方がいい。
決意したその時、名前を呼ばれた。
「青島」
返事をする前に腕を掴まれる。
え?
いつもは僅かに下にある顔が、上がり段に立つ分だけ見上げる位置にある違和感。
「なん・・」
・・・・・・・初めてにしちゃ長くないか?
室井さんにキスされていると自覚したのは、触れていただけだった唇の角度を深く直された時だった。
さっきの酒の味がする。今のが旨い。なんでだろ。
あ。。。
あ?
離れてしまった感触を惜しく思った自分に悩んでいると、今度は耳元で声がした。
「青島」
うわ、イイ声(なんだコレ)
名前呼ばれただけなのに(ゾクゾクする)
「靴を脱ぐのが面倒だったら帰ってくれていい」
背中を抱き込む腕。
首筋に当たる唇と鼻先の感触。
やっぱり帰りたくない。
部屋に逆戻りすることに決めた俺は、靴を脱ぎたくて室井さんの胸を少し押し返した。
「すまなかった」
・・・・・・・潔いところは好きだけど、その自己完結は早すぎんじゃない?
だいたい目ぇ閉じちゃうから勘違いすんだって。
手を使わずには脱げないワークブーツを立ったまま脱いで放り出し、そのまま室井さんに抱きつく。
おっきい目。驚いてるからかいつもより2割増しくらい。
「面倒じゃないです。帰らなくていい?」
探るように上目づかいで伺うと、室井さんの表情が険しくなる。
あ、あれ?だめ?
被疑者を連行でもするように二の腕を掴んだ室井さんは、そのまま俺を引きずってリビングとは反対のドアを開けた。

上だの下だのを気にする間もなく俺を攻略した室井さんは、翌朝になってようやく「好きだ」とポツリと言った。



おそ〜〜い!!










END

瀬尾様


瀬尾さんから可愛い室青を頂きました(^^)
だめなわけあるかーい!と思いました。私が思っても仕方ないですが。
青島君に「帰らなくていい?」なんて聞かれたら、
室井さんなら住民票を移しかねませんよねーv
きっと室井さんならやってくれるはず!

このお話の室井さんバージョンも頂いてしまいました。
そちらも是非ご覧ください〜v

瀬尾さん、いつもありがとうです!



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