約束










情事のあと、俺達は二人でベッドに横になっていた。

 

「室井さん・・・」

「ん?」

「・・・何でもありません」

「変な奴だな・・・シャワー浴びてくる・・・・」

室井さんは、シャワーを浴びに浴室へ行った。

 

(俺ってば・・・本当にあの人のこと・・好きなんだな・・・もう少し抱いて欲しいって思うなんて・・・・・)

俺が、考え事をしているうちに、何時の間にかシャワーを浴びた室井さんが、目の前に立っていた。

 

「どうしたんだ?青島・・・」

「何がです?」

「今日のお前は・・・どこか可笑しい・・・・」

「・・・そうですか?」

次の瞬間、俺の目に白い天井が映っていた。

俺は、室井さんに押し倒されていた。

 

「青島・・・・」

「室井さん・・・もう一度・・・抱いてください・・・・」

「珍しいな・・・お前から言うなんて・・・」

「今日は・・・何か抱いて欲しいんです・・・・」

「分かった・・お前が気絶するまで抱いてやる・・・」

「はい・・・・」

結局室井さんは、俺が本当に気絶するまで、俺を愛してくれた。

 

この時の俺は、本当に可笑しかった。

いつもなら、激しく俺を抱く室井さんに嫌気が刺してくるのに、この日は俺が室井さんを、忘れないぐらいに、抱いて欲しかった。

 

もしかしたら、俺にとってこの日が、室井さんに会える最後の日だと、分かっていたのかも知れない。

 

 

 

その日、俺は湾岸署に来ていた室井さんを、警視庁まで送り届け、車を降りた室井さんに挨拶をし、湾岸署に戻ろうと車に乗り込むところだった。

そこへ、目の前に見知らぬ男性が現れた。

 

「何ですか?」

「・・・・」

「あの・・俺に何か用ですか?」

「お前・・・警察官か・・?」

「そうですけど・・・」

(こいつ・・・可笑しい?)

「警察の・・・人間か・・?」

「お前・・・クスリ・・・やっているのか!?」

「警察は・・・みんな・・俺の敵だ!!」

男の懐から拳銃が見えた。

拳銃には、サイレンサーが付いており、次の瞬間その拳銃は、火を吹き俺の身体を貫いていた。

 

 

俺は、青島に送ってもらい、1課へ戻ろうと、警視庁の階段を上がるところだった。

そこへ、青島の声が聞こえてきた。

 

「青島?」

青島を見ると、青島の前に知らない男が立っていた。

 

「どうしたんだ?青島・・・」

「管理官・・どうされました?」

「いや・・分からない・・」

俺が声を掛けた瞬間、青島の身体が前に倒れた。

 

「青島・・!?」

俺は、青島に駆け寄った。

 

「青島!どうし・・・!?」

青島を仰向けにすると、腹部から出血していた。

 

「青島!!」

「む・・ろい・・さ・・・ん・・?」

「管理官!!」

「その男を逮捕しろ!!銃刀法違反と殺人未遂の現行犯だ!!」

「はい!!」

青島を撃った男は、瞬く間に逮捕され、取調室へ連行された。

 

「青島・・・・」

「室井・・・さ・・ん・・・・・ごめん・・・ね・・・」

「喋るな!!」

「俺・・・室井さん・・との・・・約・・束・・・・守れ・・そうに・・・ない・・や・・・」

「何を言っているんだ!!しっかりしろ!!」

「ごめ・・・ん・・・」

「青島!!」

「あなた・・・・を・・・遺して・・・・逝く・・・俺を・・・許し・・・て・・・・・・」

「青島!逝くな!!」

「愛してる・・・あなた・・・・だけ・・・・を・・・・・・・」

俺の頬を触っていた青島の腕が、力を無くしたように、地面へと落ちた。

 

「青島?」

「青島!!」

「俺を・・・俺を一人にするな!!青島ぁぁぁ!!!!!」

俺の叫び声は、警視庁の中にまで響き渡った。

 

青島は、俺の腕の中で息を引き取った。

まさか、数日前に会ったのが最後になるとは、俺も思っていなかった。

しかし、不思議と涙は出なかった。

いや、出せなかった。

 

 

 

そして、10年後の今日。

俺は、青島の墓標の前にいた。

 

「青島・・・中々来れなくてすまん・・やっと・・・・お前との約束を守ったぞ!!」

この日、俺は晴れて警視総監になった。

青島が、俺に警視総監になって、警察を変えてくれと言った、約束を守るために。

 

「長かったが・・・・やっとここまで来れたぞ・・・青島・・・・・」

(おめでとうございます!室井さん!!!)

青島の声が、聞こえてくるような感じがした。

 

「しかし・・・何故・・・何故・・俺の隣にお前がいないんだ!・・・約束したじゃないか!一緒に変えようと・・・・約束・・・し・・・・」

俺は、それ以上声にすることが出来なかった。

10年前、青島の遺体を前にして、泣くことが出来なかった。

それが、やっと泣けたのだ。

 

「見ていてくれ!!絶対に警察を変えて見せる!!絶対に!!!」

(頑張ってください!!室井さんは・・・俺が信じた男なんですから!!)

「ああ・・・やってみせる!!」

俺は、墓標に伝えると、SPの待つ車へと向った。

背中から、青島に敬礼をされているかのように感じた。

























END


noriko様から頂きました!
・・・切なぁいですね〜(涙)
青島君が死んだ後も、室井さんが約束を諦め無かったことが嬉しいですね。
二人の夢を叶えるために警視総監になってくれたことも。
きっとずっと室井さんを見守っている青島君のためにも、
警察を変えてくれるでしょう!
noriko様、この度はありがとうございました!