「怒ってません」
「嘘つけ」
「嘘じゃないっすよ」
「そんな顔で言われても、説得力ないぞ」
「男前でしょ」
「ホッペタ膨れてるが」
「頬袋があるんですよ」
堪え切れずに室井は吹き出した。
もちろん、青島に睨まれる。
頬袋を膨らませたままなので、恐くはない。
恐くはないが、青島が可哀相なので、慰めてみる。
「仕方ないだろ?仕事なんだし」
ちっ
「でも、だって、明日は俺も休みのはずだったんですよ」
今日は大晦日。
明日の元日は二人揃って非番を取れたので、珍しく一緒にのんびり年を越せると青島が喜んでい
たのは、少し前のことだ。
元日に出勤するはずだった森下が、インフルエンザにかかってしまったらしく、急遽青島が森下
の代わりに出勤することになってしまったのだ。
室井が約束通りに仕事を終えて青島の家に来てみれば、既に青島はご覧の状態だった。
「インフルエンザじゃ仕方ないだろ?」
「分かってますよっ、分かってますけど・・・・・・室井さんは残念じゃないわけ?」
むうっと膨れると、青島は室井に背を向けた。
その背中に苦笑する。
室井も正直に言えば、残念で仕方ない。
青島と二人きりのお正月を、楽しみにしていなかったわけがないからだ。
だが、ダメになった本人がここまでへこんでいたら、室井が我が儘を言う必要はない。
だって、室井が言いたいことは、みんな青島が言ってくれる。
「ずっと楽しみにしてたのに」
カウントダウンを始めているテレビを見つめながら、青島がぼやいた。
「室井さんとのんびりできると思ったのに」
悔しそうに、残念そうに言いながら、いきなり青島の身体が背後の室井に向かって傾いだ。
驚いたものの、背後から抱きしめる形で受け止める。
上から覗き込むように顔を見ると、相変わらず膨れっ面だった。
不機嫌なまま甘えてくる青島に、どうしたって笑みが零れる。
青島が無意味な駄々をこねている理由は、室井と一緒にいたいから。
ただそれだけだ。
「・・・なんか楽しそうっすね」
機嫌の良さそうな室井に、青島の眉が寄る。
室井は苦笑しながら、手の平で青島の前髪をかきあげ、剥き出しになった額に唇を押し付けた。
「君が可愛いからな」
青島の眉間が更に寄る。
「バカにして」
「してない」
きっぱり否定したが、青島は聞いていないらしい。
あけましておめでとー!とテレビからのんきな声が聞こえる中、青島の苛立ちは頂点に達したよ
うだ。
「くそっ、俺だってねぇ、こんなことで子供みたいなこと言いたかないですけどねぇ、でもしょ
うがないでしょ!出ちゃうんだからっ」
あーもー腹立つー!と絶叫する青島が可笑しくて愛しくて、室井は破顔した。
もう一度額に唇を押し付けて、青島の胸元で軽く手を組む。
緩く抱き込んだ身体が暖かい。
「まだ、時間あるだろ?」
静かに囁くと、青島の視線がゆっくりと持ち上がり、室井を見上げる。
「明日の朝までゆっくりしよう」
柔らかい眼差しを向けると、青島の頬がへこんだ。
大きな声を出していくらかスッキリしたのか。
青島の手が、室井の手に重なる。
「・・・すいません、約束破って」
いささか遅い謝罪だが、そんなものは元より必要ない。
「約束、破ってないだろ?」
「え?」
「明日も君が帰ってきてから、一緒にのんびりすればいい」
一緒にいられる時間は減ってしまっても、ゼロになるわけじゃない。
その時間を大事にすることは、今の二人にもできること。
青島は下から室井を見上げ、ちょっと考えて、苦笑した。
それから視線を落とし、握った室井の手に指を絡める。
「暇じゃないっすか?一人で待ってるの」
「別に。自分の家にいたって、一人だ」
「まぁ・・・そりゃあ、そうっすね」
「買い物行って、夕飯の仕度でもしてよう」
「あ、お節料理作れる?もしかして」
「すまないが、さすがに無理だ」
「ははっ・・・・・・冗談っすよ」
視線を持ち上げた青島が楽しげな笑みを零していたから、室井は目を細めた。
室井の手が、青島の前髪を梳き、おでこを撫でる。
黙って何度も繰り返すと、青島が不思議そうな眼差しを寄こした。
「室井さん?」
「いや・・・」
室井は小さく笑うと、青島の顎に手をかけて、身を屈める。
「可愛いと思っただけだ」
「まだ言いますか・・・」
眉を寄せた青島の唇を優しく塞いだ。
怒っていても、膨れていても、もちろん笑っていても。
―青島は可愛い。
そう思える室井は、今年も間違いなく幸せだ。
END
そういうわけで、勝手に書いてしまいました(^^;
だって、だって、あんまりにも二人が可愛かったんですものっ。
うう・・・その可愛らしさがちっとも文字になっていないのが悲しい・・・(涙)
いいんだいいんだ。
二人が可愛いでしょう!?というアピールをしたかっただけだもん。
アピールはできたからいいんだもん・・・;
hana様、イメージを壊すようなお話になっておりましたら、
大変申し訳ありませんでした!
素敵なイラスト、素敵な萌えを、有難う御座いました(^^)