時々、室井は青島が解らないと思うことがある。

普段は人一倍、周りに気を遣って、外で自分と接するのを避けようとするくせに、たまにいつもとは全く違

うよう
になることがあるのだ。

そう。例えばこんな風に。

「室井さん、キスしてください。」

青島が言う。

可愛い顔をして。

普段なら、こんな顔でキスしてくれとせがままれれば、喜んでするだろう。

そう。普段なら。

だけど、今は二人きりの部屋ではなかった。

実は湾岸署のいつものメンバーと何故か一倉までと飲みに来ていたのだ。

勿論、これは青島に誘われて仕方なく。

そして、当然のように自分の隣に座った青島に、まだ酔ってもいないと思われる青島にこんな言葉をぶつけ

られ
たのである。

ここにいるメンバーは皆、室井と青島の関係を知っている。

メンバーはすみれ、真下、雪乃、一倉だ。

そして、このメンバーは二人の関係を嫌悪するどころか、暖かい目で見守ってくれている。

それは室井にとっても、とてもありがたいこと。

だけど、知っているからかと言って、人前で恋人とキスする趣味など室井は持ち合わせてはいないのだ。

「何、言ってるんだ?君は。」

室井は呆れた顔をして言った。

だけど、今日の青島は引かない。

いつもなら、冗談ですよ。

などと言って、舌をぺろりと出したりするのに。

今日の青島は室井の首に腕まで回してきたのだ。

他の皆は好奇心旺盛な顔をして二人を見ている。

終いには、

「いいじゃないか。室井。キスくらいしてやれば。二人きりの時はもっと凄いことしてるんだろ。」

などと一倉が言い出し、他の皆も、そうだ、そうだと口々に言い始めた。

「ね、室井さん。皆もああ言ってるし、してください。」

青島は悪戯っ子のような顔で室井を見る。

「青島」

「・・じゃないと俺、あなたの俺への愛疑います。」

室井は青島のその言葉に絶句した。

一体、どうして青島は今キスしないだけで、室井の愛を疑うと言うのだろう。

「・・ねぇ」

青島の目が段々潤んできた。

わざと青島は腰を低くして室井を上目遣いで見るようにしている。

室井はこんな青島に弱い。

例え、これが青島の策略なのだと解っていたとしても。

だから、室井は大きな溜息を吐いて、

「解った。一回だけだぞ。」

と言い青島の顎を手でくいっとあげ青島のキスをした。

その途端にキャーキャーワーワー黄色い歓声があがる。

「これでいいだろ。」

室井は真っ赤になりながら、グラスに入った酒を一気に飲み干した。

「いいなあ。青島くん。」

すみれが言う。

「本当、羨ましいです。青島さん。」

雪乃が言う。

真下も頷いている。

「そうでしょ。いいでしょ。」

青島はにこにこしながら言った。

そんな青島を見て室井は一体どういうつもりなんだと思う。

普段なら自分よりも遥かに皆の前で気を遣う青島なのに、ここにいる皆は自分達の関係を知っている者ばか

だからだろうか?

それとも酒の席だからか?

室井はそんな考えが頭の中を駆け巡る。

だけど、まあ、これ以上はさすがに青島も何もしてくれとは言わないだろう。

そんな風に室井が思っていると、いきなり青島に左手を握られた。

青島は室井の左隣に座っているのだ。

青島は室井の手の平を指でくすぐる。

その感覚に室井の背中にぞくりとした感覚が走った。

室井は青島を睨みつける様な目で見る。

だけど青島は何事も無いような顔をして皆と話している。

室井の手への悪戯はやめないで。

だから、室井は青島の手をぎゅっとつねった。

「って・・」

「青島くん、どうしたの?」

すみれが言う。

「ううん。別に。何でもないんだ。」

そう言い今度は青島が室井を睨みつけた。

だけど、室井は君がこんなことをするからだろうと言いたげな顔をした。

そして、今度こそ青島は室井への悪戯をやめると思ったのに、よりにもよって青島の手は室井の中心へと伸

てきたのだ。

室井はまた青島を見る。

だけど、青島は室井の中心を握り締めた。

「っつ・・」

「今度は室井さんだ。一体二人で何してんの?怪しいわね。」

すみれが言う。

「いや、何でもない。ただ」

室井が言う。

「ただ?」

すみれが聞き返す。

「−私はもう帰らせて貰う。ここの支払いは私がするから、いいだろう?」

そう言い室井は立ち上がる。

「おい、室井。それはルール違反じゃないのか。それとも、こいつも一緒か?それならいいか。」

一倉は青島を指刺した。

室井は本当は一人で帰りたかったが、皆の手前、青島を邪険にするわけにもいかずに青島も引き連れて帰っ

行った。

その後は二人の話題で皆が盛り上がっていたことを二人は勿論、知らない。

 

タクシーに乗り、室井は無言だった。

だけど青島を自宅には帰らせる気はなかった。

こうなったら、尋問とお仕置きをしなければいけないからだ。

幾ら、青島に甘いと言われている室井でも限界があったのだ。

そして、二人は官舎に着き青島は室井にリビングルームのソファーに放り投げられた。

「君は一体、何考えてるんだ?」

怒った口調で室井が言う。

「・・だって」

青島が身体を起こしながら言う。

「・・困ってるあなたの顔見てみたかったし、それにキスは本当にして欲しかったんです。」

「何故?」

「そうすれば少なくとも今日いた仲間には本当にあなたは俺の恋人だって証明できるから。」

青島のその言葉に室井は眩暈がしそうになる。

「というより、そうすれば誰もあなたに近づけないでしょ?」

「しなくても近付いてなど来ない。」

「解りませんよ。あなたキャリアだし、カッコいいし。それにあそこにいる皆はいい仲間だけどあなたにも

親しみ
持ってるし・・・。」

「・・・・・。」

「それといつも素直で従順でいるより、たまには小悪魔的なとこも見せた方がいいかなと思って。だって、

いつも
素直に言うこと聞いてたら、面白みがなくなって、飽きちゃうでしょ?そりゃちょっと度が過ぎま

したけど。」

「−私は従順で素直な君の方が好きだ。」

それに一体、いつ素直で従順になったというのだと室井は心の中で思っていた。

いつだって、自由奔放のくせにと。

まあ、ただ情事の時は室井に主導権を渡す為、そうはいかないらしいが。

「・・すいません。ただ、あなたをもっと知りたかったし、あなたをもっと俺の虜にしたかっただけなんで

す。」

それで、あの場であんなことか。

室井は一体、青島の頭の思考回路はどうなっているのだろうと心の中で大きな溜息を吐いた。

「解った。」

「え?」

「もう、充分、私は君の虜だが、それでも君がまだ足りないというのなら、君の身体でもっと虜にして貰お

う。」

「え・・・」

「勿論、だから、いつも以上のことをさせてくれるし、してくれるな。幸い君と私は明日非番だしな。」

そう言い室井は嫌がって、じたばた暴れる青島をずるずると寝室まで引き摺っていった。

その後、すすり泣く青島の声が朝まで聴こえていたとか。







 

END

>愛理さま
かず様のリクエストで、強気な青島くんと困る室井さんでしたが、
何か全然強気な青島くんじゃないような・・。
しかもセクハラしてるし・・。最後は立場逆転していいってことだったので、こうしましたが、
はて、一体、青島くんは室井さんにどんなことされたんでしょうか?
こんなんでいいんでしょうか・・。もし、駄目なら書き直します。すいません><




愛理さまにリクエストをして書いていただきました!
困ったり動揺したりしている室井さんが可愛いです。
青島君のセクハラ、最高(笑)
私もしたいし、されたい・・・(おい)
室井さんは困らされた分、たっぷりお返しをしたことでしょう!
だって!「尋問とお仕置き」ですよ!!(笑)
・・・・・・この後、気になっちゃいますよねvvv

愛理さま。ありがとうございました!


「虜」