「痛むのか?治療はしてもらったんだろう?」
歯医者から帰ってきてから、ずっとソファーで蹲っているのだ。
「いちおう・・・。まだ麻酔は効いてるんだけど、痛いんですよ・・・」
そんなになるまで放っておく青島が悪いのだが、涙目にまでなられては室井も無下には出来ない。
ソファーの肘掛に腰を掛け、青島の前髪を梳いてやる。
「そうか」
「ううううう・・・」
呻き声を上げる青島に、室井は吹き出しそうになるのをこらえなければならなかった。
大きな図体をしているくせに、子供っぽいというかなんというか・・・。
―これを可愛いなどと思うのだから、俺も相当腐ってるな。
などと思いつつ、青島の頭を撫ぜる手は止めない。
青島に惚れたと気付いたときこそ動揺したものの、交際し始めた頃からとっくに開き直っている。
可愛いのだから仕方があるまい。
ふいに青島が縋るような目で室井を見上げてきた。
思わず室井の手が止まる。
本人にその気はないのだろうが、涙目の上そんな風に見上げられては・・・。
室井は青島の前髪をかきあげて、額に唇を落とす。
目を丸くした青島に構わず青島の唇にそれを近づけると、青島から焦った声で止められる。
「む、むろいさん」
「・・・なんだ」
「無理です」
歯が痛いので勘弁してください。
そう言われてしまっては、室井もこれ以上は出来ない。
しかも口内炎の時のように黙っていれば痛くないというものでもないから、キス以外のことを要求
するのも酷な話だ。
「・・・・・・そうか」
「すいません」
「気にするな」
歯の痛みで大人しくなっている青島がさらにしゅんとする。
室井は青島の歯に響かないように、そっと頬に触れた。
「・・・早く良くなるといいな」
頬を撫でながら苦笑する室井。
優しい恋人に感謝しつつ、青島は思った。
―痛みくらい忘れさせてやるとか言われたら、どうしようかと思った。
安堵しつつも、ほんの少しだけ残念に思う。
室井はそんなことに気付かない。
いまいち押しの弱い男、室井慎次。
END
(2004.3.23)
3作目の「口内炎その後ネタ」です。
「口内炎」を特別気に入っているというわけでもないのですが、何故か小ネタが浮かびます。
・・・・・・気に入っているのか?(笑)
うちの室井さん、押しが弱いというか人が良いというか・・・。
いまいちカッコ良くなりませんねぇ。
なぜ〜。