そして、決心してリダイヤルボタンで見慣れた番号を呼び出す。
時間は午前三時。
いくら相手が恋人でも、いきなり電話するには非常識な時間帯だ。
それでも掛けずにいられなかった。
どうしても声が聞きたかった。
申し訳なく思いつつ、室井は通話ボタンを押した。
呼び出し音がしばらく続く。
寝ているだろうし、熟睡していればもしかしたら気づかないかもしれない。
でも、どうしても、一声だけで良いから。
数度のコールの後、慌てた青島の声が聞こえてきた。
『む、室井さん??何かありました???』
当然寝ていたのだろう、掠れた声だった。
室井は小さく息を吐く。
すぐには声が出せなかった。
そのせいか、電話の向こうの青島の声が切迫してくる。
『室井さん?どうしたんですか?』
「あ、ああ・・・。夜中にすまない」
やっと出た言葉は謝罪だけで、室井は苦笑した。
『いえ、それは全然良いんですけど。・・・どうしたんですか?』
室井が返事をしたので少し安心したのか、青島の声のトーンが落ち着く。
どうした、と聞かれても答えられない。
まさか、嫌な夢を見たから、などと乙女なセリフが吐けるわけもない。
「いや・・・、すまない。大したことじゃなかったんだ」
『・・・?ええと?』
「すまない、特に用事はないんだ」
怒られるかと思ったが、他に言いようもなくて、室井は正直に言った。
「声が聞きたかっただけなんだ。すまない」
わざわざ謝るために電話を掛けたのかと思うほど、室井の口から謝罪の言葉がついて出た。
本当に声が聞きたかっただけで、こんな時間に話したいことなどあるわけもない。
青島の声を聞いて安心したら、ただただこんな時間に起こしてしまって申し訳なかったと思うばか
りだ。
一瞬電話の向こうで青島が黙り、室井は本当に怒らせただろうかと心配になる。
『・・・室井さん』
「すまない」
『じゃなくて。・・・今から、室井さん家、行ってもいいですか?』
怒ってる様子の全く無い青島に安心しつつ、室井は青島の申し出に驚いた。
今から来ても、後数時間しか一緒にいられない。
もちろん室井にとっては嬉しいが、青島だって明日も仕事なのにそこまでして貰う理由が無かった。
声を聞けただけで、十分なのだ。
「青島。本当に、大したことじゃないんだ」
『そうですか。それなら俺も安心です』
明るい青島の声が聞こえてくる。
『だけど、俺が会いたいんです。行っちゃだめですか?』
続いた青島の言葉に、室井は不覚にも泣きそうになった。
いつだって自然と差し出されるその手に感謝したくなる。
「・・・少ししか一緒にいられないぞ?」
『今から車飛ばせば、4時間は一緒にいられる』
嬉しそうな青島の声。
今は青島に甘えても良いのかもしれない。
室井はそう思った。
「青島」
『はい?』
自然と微笑みながら、室井は呟いた。
「ありがとう」
END
(2004.5.30)
幸せ者ですね、室井さん。
良かった、良かった(おい)
甘える室井さん。
もっとちゃんと書きたいです。
一倉さん絡んじゃうと、ギャグになるんですよね・・・(笑)