「すまない、室井・・・」
室井には目の前の光景が信じられなかった。
青島と一倉が二人そろって頭を下げている。
二人、そろって。
「浮気するのだけは嫌だったから、室井さんを騙すのだけは嫌だったから、きちんと話したかった
んだ」
真剣な表情で、青島が言う。
室井と約束を交わしたときのように、真剣な表情で。
聞きたくない。
聞きたくないが、聞かないわけにはいかないのだろう。
青島だけじゃない。
一倉だって、今までにないくらい真剣な表情だ。
切り出されたときは、二人にからかわれているのかと思った。
でも今はそれが事実なのだと、はっきり分かる。
「俺、一倉さんが好きなんです」
絶望に近い思いの中、青島が続けたセリフを聞いた。
「室井、俺はあいつと別れようと思ってる」
あいつとは一倉の奥方のことだろう。
それだけ真剣だということだ。
だから?
だからって認められるのか。
認められるわけがない。
それでも。
青島が一倉を好きだと言う。
青島が。
自分以外の人を。
どうやって、それを止められる?
別れるのは嫌だと泣いてすがるのか。
それで。
それで青島が傍にいてくれるのなら、いくらでもする。
だけど。
そうすることは。
ただ青島を苦しめるだけ。
そんなことを望んでいるわけじゃない。
それなら。
それなら。
青島が幸せになってくれる道を。
そこで、室井は目を開けた。
薄暗い部屋。自分の寝室だ。
寝汗をかいていたらしく、呼吸も荒い。
深呼吸を繰り返して、ようやく落ち着く。
そして、はっきしてきた頭で思う。
あれは夢じゃない。
「一倉、殺す」
一倉の呪いだと室井は思う。
ただの夢じゃなくて、一倉の呪いが見せる夢。
―夢にまで責任が持てるか。
きっとまた言われるだろうが。
それでも、一言言ってやらなきゃ気がすまない。
一倉が日ごろ室井で遊ぶから、こんな不吉な夢を見るのだ。
室井にはどうしてもそうとしか思えなかった。
大分追い詰められている室井慎次。
END
(2003.5.30)
夢じゃないです。一倉さんの呪いです(笑)
ギャグですね。
不憫だなぁ、室井さん・・・。
そんなわけで、続きを書きました(笑) →夢じゃない・その後へ
室井さんを幸せにしてあげようと思いまして。
本当はまとめて小説にしたかったのですが、何だか雰囲気が結構違うので別々にしてみました。