■ Parakeet


久しぶりに青島宅に訪れた室井は、見慣れないものを発見して軽く驚いた。
「インコ、飼いだしたのか?」
窓際に置かれた鳥かごに、青いインコが一匹。
「あ、それ、友達に一週間預かって欲しいって言われて」
「そうか…」
室井が覗き込むと、止まり木に止まったインコが首を傾げた。
コーヒーを入れてテーブルの上に置くと、青島も室井の横に立って一緒に覗き込む。
「何か可愛いっすよね。小動物〜」
「君は好きそうだな。ペット、飼ったりしないのか?」
「俺、生活が不規則ですからね。犬猫は厳しいかなぁ。インコくらいなら平気ですけど」
餌も水も頻繁に取り替える必要がないし、散歩もいらない。
青島が鳥かごに指を突っ込むと、インコが口ばしで突付いてくる。
「噛まれないのか?」
「たまに。結構痛いですけど、慣れました」
だって、ただ見てるだけだとつまんないでしょ。
そう言う青島に、室井は苦笑した。
一週間しか預からないというのに、頑張ってコミュニケーションを図ろうとしたらしい。
「名前は?」
「エンドウ君です」
「いや、友達の名前じゃなくて」
「違います。伊藤君のインコのエンドウ君です」
「・……そうか。変わった名前だな」
苗字と思えばちっとも変わってないが、名前と思えばすこぶる変わっている。
『エンドウクン』
突然甲高い声でインコが喋って、室井は目を丸くした。
「インコも喋るのか」
「毎日同じ言葉をいっぱい話しかけてると覚えるらしいですよ」
「だから『エンドウクン』、か」
飼い主が名前を呼ぶのを聞いて覚えたのだろう。
「青島って声掛け続けたら、覚えてくれますかね?」
何やらイキイキしだす青島に、室井は呆れる。
「一週間で覚えるのか?」
「無理かな?じゃあ、一月くらい借りて」
おいおい。借りてるんじゃなくて預かってるんだろうが。
思わず心の中で突っ込みを入れる室井。
それから、ちょっと考え込む。

「青島」
「はい?」
「飼い主が困らないか?君の名前を言うようになったら」
「…ああ、迷惑か」
青島はあっさりと断念した。

室井は密かにほっとする。
もし万が一、エンドウ君が青島の名前を覚えて喋れるようになったら、当然伊藤君の家でも喋るだろう。
それは何となく、ほんの少しだが、面白くない。
狭量ぶりを発揮するようで情けないが、青島が断念してくれて良かったと室井は思った。





END

2004.5.24

あとがき

題名はそのまんま「インコ」という意味です。
思わず辞書引いちゃいました(笑)

心が狭いぞぉ、室井さん。



template : A Moveable Feast