林檎












青島が差し出したのは、林檎。

反射的に受け取った室井は、目を丸くした。

手の中の林檎と青島を交互に見比べる。

「青島?」

「差し上げます」

「・・・林檎を?」

「林檎を」

林檎が食いたいと言った覚えも腹が減ったと言った覚えも無い室井は首を傾げる。

もう一度青島を見ると、ニコリと笑われる。

青島がくれるというのだから、貰っておけばいいのだろうか。

「・・・ありがとう」

室井はやっぱり首を捻りながら、礼を言った。

怪訝そうな顔をしてる室井が可笑しかったのか、青島が吹き出した。

もしかしてからかわれているのだろうか。

「青島」

室井が眉間に皺を寄せると、青島は苦笑した。

「ふふふ。すいません」

「何か意味があったのか?」

尋ねると、クスクス笑いながら青島が頷いた。

「誘惑」

「は?」

「林檎の花言葉だそうですよ」

果物にも花言葉があるのか。

いや、林檎の花の花言葉ということだろうか?

どうでも良いことを考えながら、室井は青島を見た。

「それで?」

「だから、誘惑してみたんですけど」

目を丸くした室井が呆然とする。

それには構わず、青島が屈託無く笑う。

「いえね?署ですみれさんの名前の花言葉について話してたんですよ」

すみれの花言葉って「慎み深さ」らしいですよ。

そう言って、可笑しそうに笑う。

確かに可笑しい。

彼女に「慎み深さ」は。

素敵な女性だとは思うが似合わない。

失礼なことを考えつつ、室井は手の中の林檎を見つめた。

「それで花言葉の話題になって、林檎の花言葉を知ったんです」

青島の手が再び林檎に伸びてきた。

室井の手のひらにある林檎の上に、青島は手を重ねた。

「で、どうしますか?」

「どう、とは?」

「誘惑されて、くれません?」

鮮やかに微笑まれ、室井は苦笑した。

拒む理由などどこにもない。




室井が返事の代わりに軽く口付けると、青島は嬉しそうに笑った。























END
(2004.5.13)


ネットでウロウロしているときに林檎の花言葉を見つけて、これはイイ!(何が)と思ってネタにしてみました。
書いてみると大したネタじゃなかったです(汗)

花言葉、全く知りません(笑)
ちょっとネットで見ただけなのですが、一つのお花にたくさんの花言葉があったりするのですね。
「すみれ」はたくさん意味があって、色によっても違うらしいです。
その中で「慎み深さ」を選んで笑い話にするすみれさん。
可愛らしい名前が照れくさかったりするタイプじゃないかなぁなどと、勝手に思っております。

直接的なのか間接的なのかいまいち判らない青島君のお誘い(笑)