■ おかえり


インターホンの音がして、青島は玄関に向かう。
いつもの癖で、相手が誰かなんて確かめたりはしない。
「はいはー…」
ガチャッとドアを開けて、青島は硬直した。
ドアの向こうにいたのは、北海道にいるはずの室井。
声も無く驚いている青島に、室井は苦笑した。
「そんなに驚かせたか?」
「な、だ、ど」
青島の口からは意味の成さない声しか出ない。
「落ち着け」
「お、落ち着けますか!」
本当にビックリしたのだ。
異動になった話はつい最近電話で聞いた。
でも何日に帰ってくるのかは聞いてなかった。
まだ決まっていないと室井が言っていたから、青島はそれを信じていた。
ドアを閉めて玄関に上がると、室井は箱を差し出す。
「これ、北海道土産だ」
半年振りあったとは思えない恋人の態度に、青島はきょとんとした。
それから破顔する。
きっと照れくさいのだろう。
当たり前だが半年経ったって、室井は室井だった。
「木彫りの熊じゃないんですか?」
「…欲しかったのか?」
「いや、室井さんなら買ってくるかと」
「いくら俺でも…」
愚にも着かない会話がそこで途切れる。
青島が室井に抱きついたからだ。
室井がすぐに抱き返してくる。
「電話、くれれば良かったのに。空港まで迎えに行きましたよ」
嬉しさを隠さない青島の声に、室井も微笑む。
「人目があるだろ。こんなことするわけにはいかないからな」
「…失礼な。いくら俺だって、人前でこんなことしませんよ」
いくらかいじけた声を出す青島に、室井が首を振る。
「君じゃなくて」
「え?」
「俺が、したくなるから」
「!」
顔を見たら抱きしめたくなる。
だから真っ直ぐ会いに来た。
そう言われて、青島は室井の肩に顔を埋めた。
見えている青島の耳が赤くなっている。

「青島」
「…はい」
「戻ってはこれたが、管理官に戻るにはもう少しかかる」
青島は顔をあげなかったが、室井の真剣な声だけで充分だ。
「はい」
少しだけ震えた返事。
「待っててくれ。いずれ、必ず」
室井の手が、肩に押し付けたままの青島の頭を撫ぜてくれる。
青島はますます顔をあげられず、室井の肩にすがりついた。


言いたいことはいっぱいあった。
だけど、今伝えたいことは一つだけ。


戻って来てくれて。
会いに来てくれて。
約束を忘れないでいてくれて。
諦めないでいてくれて。


「ありがとう、室井さん」





END

2004.4.28

あとがき

似たようなお話、いくつか書いてる気がします。
でも、ちょっとだけ、好きなお話だったりします(^^)

室井さんが北海道にいる時のお話を、いつかちゃんと書きたいな。



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