■ 相合傘
居酒屋から出てくると、丁度雨が降り出したところだった。
「雨か…」
「あ、まじっすか?良かった、置き傘持ってきて」
黒い傘を手にした青島が、室井の後に続いて店を出てくる。
室井が苦笑した。
「君が珍しくそんなもの持ってるから、雨が降ったんじゃないか?」
「ひでぇ。そういうこと言うと、入れてあげませんよ」
室井が冗談で言っているのが分かるから、青島も本気ですねているわけではない。
その証拠に、すぐに傘を開いて室井に差し掛ける。
「すまない」
「いーえ。ちょっと狭いですけど、我慢してくださいね」
「贅沢が言える身分じゃない」
生真面目な室井らしい返事に、青島が笑う。
確かに成人男性が二人で一本の傘に入るのは、結構きつい。
二人とも肩まではカバー出来ないが、それも致し方ない。
「男二人で相合傘。何か可笑しいっすね」
クスクス笑う青島につられて、室井も小さく笑う。
「そうだな」
「でも、利点もありますよ」
「…?なんだ?」
青島が室井の耳元で笑う。
「公衆の面前で堂々と室井さんとくっつける」
室井は目を見開いて青島を凝視した。
それから、眉間に皺を寄せる。
「からかうな」
「からかってません」
本音ですよと小さく付け足すと、室井は握っていた傘ごと青島の手を引っ張った。
傘に遮られて視界が急に狭くなり、青島の足が止まる。
「うわっ!むろ…っ」
再び歩き出す。
今度は傘は室井の手の中だ。
「意外」
「…何が」
「室井さんが外でこういうことするとは思わなかった」
「……すまない」
「嫌だったわけじゃないですって」
「そうか」
照れくさいのか室井の返事は固い。
自分でしたくせに、と思うと青島は何だか可笑しかった。
青島は自分の唇に人差し指を当てて微笑んだ。
「何なら、もっかいします?」
END
2004.4.16
あとがき
男の方の相合傘って可愛い気がしませんか?
いや、恋人同士じゃなくていいんですが(笑)
なんか仲良しさんなんだなーとか思いますね。
まあ、あまり見たことないですが…。
室井さんがお外でこんなことするか分かりませんが、
すぐ近くに青島君がいるんだもん。
そんなこともあるかもしれませんよねっ(笑)
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