■ 甘栗
青島は「あ」と声を漏らした。
「…くそっ。なんでかなぁ?」
手の中には、半分に割れた甘栗。
青島だって甘栗の皮の剥き方くらい知っている。
しかし、上手く剥けないのだ。
室井が苦笑して手を差し出す。
「貸せ」
「…すんません」
素直に室井に甘栗を渡す。
室井の手の中で、するっと剥ける甘栗。
「なんでかなぁ」
青島はもう一度呟いた。
手順は同じはずなのに。
青島がやっても綺麗には剥けない。
渋皮が残ったり、半分に割れたりするのだ。
「不器用なんじゃないか?君が」
「手先だけは器用なんですねぇ、室井さん」
「…だけ、とは何だ」
室井が眉間に皺を寄せる。
だけど、青島は室井ほど性格が不器用に出来ている人間を他に知らない。
「やだな。不器用な性格は室井さんの長所だと思ってますよ、俺」
そこに惚れたのだから。
青島がにへらっと笑うと、室井は軽く目を瞠った。
それから溜息を吐いて力を抜くと、皮の剥けた甘栗を持った手を青島に伸ばす。
今度は青島が目を丸くする番だった。
室井の手が青島の口元まで伸びたからだ。
「…ん」
小さく促され、青島は一瞬躊躇ってから口を開いた。
口の中に甘栗が押し込まれる。
「美味いっす」
「…そうか」
青島と目を合わさないまま、新たに甘栗を剥こうとする室井に青島は苦笑した。
「照れるくらいなら、やらないでくださいよ」
「…すまない」
「いや、謝らなくても…」
室井が再び皮の剥けた甘栗を差し出してくる。
今度は手渡そうと思ったのだろう。
先ほどより手前に差し出された室井の手を見て、青島は笑って口を開けた。
かぱぁと口を開いて待っている青島を見て、室井は一瞬固まる。
そして青島の意図を悟ると、苦笑してその口に甘栗を落としてくれた。
噛んで飲み込むと、青島は満面の笑みを浮かべた。
「美味い」
「餌付けしてる気分だ」
「今更必要ないでしょ」
こんなに懐いてるのに。
青島がそう言って笑うと、室井もつられて破顔した。
END
2004.4.11
あとがき
甘栗くらい自分で剥いてください、青島君。
甘栗くらい普通に食べてください、室井さん。
甘栗、上手に剥けますか?
あれは案外難しいですよね〜(^^;
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